そのキーのダイアトニックコードには存在せず、他キーから借りる形で使うコードの事を、借用和音(しゃくようわおん)と言います。借用和音にも機能的に色んな種類があり、定番のものには名前が付けられています。簡単なコード進行を例に挙げ、代表的な借用和音を見ていきましょう。

裏コード

Cメジャーキーのダイアトニックコード
Cメジャーキーのダイアトニックコード表

主要三和音と副三和音

復習になりますが、ダイアトニックコードの145番目を主要三和音と言い、曲の中枢となるコードです。そして、2367番目を副三和音と言い、主要三和音の代わりが出来るので、代理和音とも言います。次からも同じCメジャーキーで、コード進行を考えていきましょう。

  • 主要三和音だけのコード進行
    主要三和音だけのコード進行8小節
  • 副三和音を置いたコード進行
    副三和音を置いたコード進行8小節

副三和音も安定する

❶は主要三和音だけで、安定感のあるコード進行です。❷は副三和音も使ったコード進行で、同じダイアトニックコードという事もあり、これも安定感のあるコード進行、と言えるでしょう。

借用和音(裏コード)を置いたコード進行
借用和音(裏コード)を置いたコード進行8小節

借用和音の裏コード

先程の❷のコード進行から、7小節目をD7にしてみました。これが借用和音の一つで、通称裏コードと言います。Cメジャーキーに於ける、本来のDはG7ですが、そのG7の裏コードがD7、という具合に表現します。何故、D7がG7の代わりになるのかは、次の通りです。

G7とBØとD7の構成音
G7とBØとD♭7の構成音のTAB譜

裏コードもドミナントモーション

G7ドミナントモーションを起こし、それの起因はBとFの音程で、BØにもBとFがあります。そして、D7にもFとC=Bがあり、これらの二音がドミナントモーションの起因となるので、裏コードとして使えるわけです。

  • Cメジャーキー
    (Cマイナーキー)
    に於ける裏コードD7
    Cメジャーキー(Cマイナーキー)に於ける裏コードD♭7の指板図
  • Fメジャーキー
    (Fマイナーキー)
    に於ける裏コードG7
    Fメジャーキー(Fマイナーキー)に於ける裏コードG♭7の指板図
  • Gメジャーキー
    (Gマイナーキー)
    に於ける裏コードA7
    Gメジャーキー(Gマイナーキー)に於ける裏コードA♭7の指板図

裏コードの探し方

裏コードはトニックコードの音名の、半音上に位置します。❸はCメジャーキーで、3弦3フレットの半音上はD、❹はFメジャーキーで、4弦1フレットの半音上はG、❺はGメジャーキーで、4弦3フレットの半音上はA、という具合です。そして、これはマイナーキーでも同じです。

  • メジャーディグリーの裏コード
    メジャーディグリーの裏コード表
  • マイナーディグリーの裏コード
    メジャーディグリーの裏コード表

裏コードのディグリーネーム

❻のメジャーキーでも、❼のマイナーキーでも、裏コードのディグリーネームは7と表し、2度フラットセブンスと読みます。なので、裏コードはトニックの半音上、と説明しましたが、トニックの音名ではなく、2度の音名を使い表記してください。

代理コードで統一

説明してきたように、副三和音を代理和音、他キーから持ってくれば借用和音、と言いますが、代理和音も借用和音も、代理コードという呼称で、統一している場合もあります。

セカンダリードミナント

Cメジャーキーのドミナントモーション
Cメジャーキーのドミナントモーション表

仮のトニックコード

Cメジャーキー内で考えると、C△7やC△6に対して、G7からドミナントモーション(DM)、をかけられます。しかし、その他のコードにも、借用和音を利用すればDMをかけられ、それをセカンダリードミナントと言います。方法ですが、その他のコードを次のように、仮のトニックコードと考えます。

副七の和音

セカンダリードミナントは、副七の和音(ふくしちのわおん)や、二次的ドミナントとも言われます。

  • D
    E
    Aナチュラルマイナーキー
    D・E・Aナチュラルマイナーキー表
  • D
    E
    Aナチュラルマイナーキー
    (ドミナントセブンスコード)
    D・E・Aナチュラルマイナーキー(ドミナントセブンスコード)表

ドミナントセブンスにする

ナチュラルマイナーキーの場合、5番目に出来るのは、❶のマイナーセブンスコードです。これではDMを起こせないので、❷のA7B7E7の、ドミナントセブンスコードにしてやります。

FGメジャーキー
F・Gメジャーキー表

最初からドミナントセブンス

FGメジャーキーの場合、5番目のコードは最初から、C7とD7のドミナントセブンスです。なので、これはそのまま使ってやりましょう。

  • Bナチュラルマイナーキー
    Bナチュラルマイナーキー表
  • Bナチュラルマイナーキー
    (ドミナントセブンスコード)
    Bナチュラルマイナーキー(ドミナントセブンスコード)表
  • Bナチュラルマイナーキー
    (トニックコードがBØ
    Bナチュラルマイナーキー(トニックコードがBØ)表

減5度を持つコードは効果薄

BØは❸のBm7を、トニックコードとして考えます。そうすると、ドミナントセブンスコードは❹のF#7です。しかし❺のように、元のBØにすると、DMの効果は薄まります。これはBØが減5度を持つ為、とされています。なのでBØには、セカンダリードミナントを、使う機会が少ないようです。

セカンダリードミナントの効果が薄いコード
セカンダリードミナントの効果が薄いコード表

増5度を持つコードも効果薄

セカンダリードミナントの、効果が薄いとされるコードを、黄色で示しています。上表によると、増5度を持つコードに対しても、セカンダリードミナントの効果が薄い、というのが分かります。しかし、例外も多々あるので、気にし過ぎないようにもしましょう。

  • セカンダリードミナントなし
    セカンダリードミナントなしのコード進行表8小節
  • セカンダリードミナントあり
    セカンダリードミナントありのコード進行表8小節
  • セカンダリードミナントの裏コード
    セカンダリードミナントの裏コードのコード進行表8小節

セカンダリードミナントの裏コード

❻のコード進行に、セカンダリードミナントを加えたのが❼です。更にセカンダリードミナントの、裏コードを使用する場合もあり、それが❽です。ここでは極端に使っていますが、セカンダリードミナントも、メロディ等の兼ね合いで、上手く使ってやりましょう。

ダブル(ドッペル)ドミナント

❼の78小節目ですが、DMが2回続いています。これをダブルドミナント、ドイツ式ではドッペルドミナントと言い、連結力の強いコード進行です。因みに❻の78小節目は、ツーファイブというコード進行で、これも良い流れのコードワークです。

サブドミナントマイナー

  • Cメジャーキー
    Cメジャーキーのダイアトニックコード表
  • Cマイナーキー
    Cマイナーキーのダイアトニックコード表

サブドミマイナーが最多

❶のCメジャーキーで作曲するとして、そこに同主短調である、❷のCマイナーキーのコードを、借用和音として組み込んだりします。特には黄色で示す4番目のFmを、Fの代わりに使う事が多く、これをサブドミナントマイナーと言います。以降もCメジャーキーを基準に、考えていきましょう。

準固有和音

ここでのCマイナーキー側を、準固有和音(じゅんこゆうわおん)とも言います。またサブドミマイナーの他に、1番目のトニックマイナー、5番目のドミナントマイナーも、稀に使われたりします。

  • サブドミナントの3小節目
    サブドミナントの3小節目
  • サブドミナントマイナーの3小節目
    サブドミナントマイナーの3小節目

サブドミマイナーの特徴

❸のサブドミナントを、サブドミマイナーに変えたのが❹です。サブドミマイナーを使用すると、やはり悲しげな雰囲気を出せるでしょう。サブドミマイナーの後は、上記のように、トニックコードへ進行する事が多いですが、ドミナントコードや、その他のコードへ進行しても構いません。

Fmの代理コード
Fmの代理コード表

短6度のAが共通する

Fmをサブドミマイナーの基準、と考えたとします。そしてその場合、Fmの代理コードもあり、いずれも響きが似ているコードです。その数は音楽理論書により、上記以外に多少前後しますが、短6度のAが共通する音、というのを覚えておきましょう。

  • サブドミナントマイナーがFm6
    サブドミナントマイナーがFm6の4小節
  • サブドミナントマイナーがFm7
    サブドミナントマイナーがFm7の4小節
  • サブドミナントマイナーがA△6
    サブドミナントマイナーがA♭△6の4小節
  • サブドミナントマイナーがA△7
    サブドミナントマイナーがA♭△7の4小節
  • サブドミナントマイナーがD△7
    サブドミナントマイナーがD♭△7の4小節
  • サブドミナントマイナーがDØ
    サブドミナントマイナーがDØの4小節
  • サブドミナントマイナーがB7
    サブドミナントマイナーがB♭7の4小節

サブドミナントマイナーに合わせる

先程のサブドミマイナーの違いを、聞き比べてみましょう。やはりどのサブドミマイナーが、メロディに合っているか、というのが大事です。しかし、サブドミマイナーに合わせて、メロディを変えてしまう人もおり、それはそれで良いでしょう。作曲の機会があれば、色々試してみてください。

パッシングディミニッシュ

ディミニッシュセブンスコード
ディミニッシュセブンスコード4小節

複数のコード表記

上記はいずれも四和音の、シーシャープディミニッシュセブンスです。恐らく最も多いのは、C#dimの表記ですが、これはC#Oも含めて、三和音と考える人も居るので、注意しましょう。

  • パッシングディミニッシュなし
    パッシングディミニッシュなしの2小節
  • パッシングディミニッシュあり
    パッシングディミニッシュありの2小節

パッシングディミニッシュの効果

❶のC△7からDm7と、Dm7からEm7は、全音の音程があります。その全音の間に、両方を半音で繋げるように、ディミニッシュセブンスを置いたのが❷です。このようなディミニッシュセブンスを、特にはパッシングディミニッシュ(pd)と言い、コード間の流れをスムースにします。

pdの置き方について

pdは全音同士のコード間に置く、というのが多いですが、pdが後のコードに、半音で繋がってさえいれば、Em7⇒G#O⇒Am7というような、pdの置き方も見られます。

Cメジャーキーのパッシングディミニッシュコード(上行形)
Cメジャーキーのパッシングディミニッシュコード(上行形)表

pdを使い辛いコード間

ここでもCメジャーキーを例に挙げると、4つのpdを使う事が出来ます。BØですが、これはビーハーフディミニッシュと言い、ディミニッシュの性格を、既に持っているので、Am7との間にA#Oは、使い辛いとされています。ただ決して、使えないという事ではありません。

pdで雰囲気も大きく変わる

❸のコード進行に、pdを置いたのが❹です。❸と❹は同じ、メロディベースラインですが、伴奏のコードに変化があると、雰囲気も大きく違ってくるはずです。もちろん好き嫌いがあるので、無理やりpdを置く必要はありません。

pdを自由に置く人もいる

❸のコード進行にpdを自由に置き、コード進行にアレンジをつける、ピアニストやギタリストも居ます。そしてこれは前述した、裏コードやセカンダリードミナントでも、同じ事が言えます。

Cメジャーキーのパッシングディミニッシュコード(下行形)
Cメジャーキーのパッシングディミニッシュコード(下行形)表

下行形ではpdは1つ?

先程はコードの上行形で使えるpdでしたが、下行形ではEOだけ使い易い、とする音楽理論書も多いです。しかし、これも絶対的ではなく、使っている曲もあるので、気にし過ぎないようにしましょう。

  • Em7からのパッシングディミニッシュ
    Em7からのパッシングディミニッシュの2小節
  • C△7からのパッシングディミニッシュ
    C△7からのパッシングディミニッシュの2小節
  • Am7からのパッシングディミニッシュ
    Am7からのパッシングディミニッシュの2小節

トニックコードに変化を付ける

下行形の場合も❺のようにpdを置く、というのが最もシンプルです。そこから、Em7を他のTTの、❻や❼のようにする、という事もあります。

pdの代理コードもある

サブドミナントマイナーに、代理コードがあったように、pdにも代理コードがあります。しかし、長くなってしまうので、割愛させてもらいます。

記事終了
このページのまとめ
  • 借用和音は他キーから借りるコード。
  • 借用和音を自由に置く人も多い。
  • 借用和音の種類は他にもある。